気がつくと里美は部屋を飛び出していた。
「こぉら。待ったらんかい、おっさん!」
ムアンギを庇うように両手を広げ、男の前に立ち塞がった。

「なんだおまえ。どけ」
手荒に里美を押しのけ、なおも蹴る。

里美の顔色が変わった。
「子供蹴飛ばすなんて大人のやることか!このバカタレが!
ひっさしぶりのボキンパーンチッ!」
ムアンギが止める間もなく、里美の右ストレートが
綺麗に男の顎に入った。
男はよろめいて、一瞬、膝をつく。

「危ない、里美先生っ!よけてっ」

ムアンギが止める間もなく、男は立ち上がり、里美の頬を平手で打った。
ふらつく里美をムアンギが必死で支える。

「ムアンギ、きさま首だ。銃を置いて何処へでも行ってしまえ。
女、その顔覚えておくぞ」

ムアンギに支えられ、学校に戻った里美をようやく起きてきた
俊輔が驚いて出迎えた。
「里美、一体何があったんだ?」

事情を聞いた俊輔から、いつもの穏やかな表情が消えた。
「許せん…」

飛び出そうとする彼の手を里美が握り締める。
「だめ。銃を持っているから。それより、ムアンギ君の働き口を
探してあげなきゃ。私のせいで兵隊を首になってしまった」


十へ