久雄は、いつものように飼い犬のシロを連れて散歩に出掛けた。
よたよたと歩くシロに合わせ、のんびりと河原を目指す。
久雄は道すがら、シロが家に来た頃を思い出していた。



シロは、上の娘の愛美が小学二年生の時に拾ってきた犬だ。
学校からの帰り道、ガリガリに痩せたシロを見かけ、残ったパンを与えた。
その時には、シロは既に子犬では無かったのだが、犬好きの久雄の血を引いた愛美は怖がらず、また気を抜かずに相手をしたらしい。
たちまち懐かれてしまい、恐る恐る家に連れ帰ったというわけだ。

愛美がそこまでするのも無理からぬことであった。
シロは賢く、人懐っこい犬であった。
明らかに雑種だが、所々に現れる穏やかさや品の良さが、良い血統を思わせる。

引っ越して間も無かった久雄は、丁度良い番犬か、と飼うことを許した。ありがとうと頭を下げる愛美に合わせ、シロも頭を下げた。
久雄は、笑いながら両方の頭を撫でた。

(人の言葉が解っているようだな)

単なる偶然だろうと久雄は自分を笑ったが、その後もシロは、言葉が解っているのではと思わせる頭の良さを見せた。

何々を持ってきてと頼むと、ちゃんと持ってくる。

二へ