「え?え?」
「麻理ちゃん、いいから早く行こう!」
思いのほか強く引っ張られ、志郎に引きずられるように
麻理は食堂を出た。

「なによ痛いってば」

「早く、このまま玄関へ」

「あ、そうか。あんた意外と要領いいわね」

「麻理ちゃんがぼんやりし過ぎっ!」
言い返す言葉も出ないまま、麻理は志郎の後に続いた。
もう少しで玄関ホールである。
これで助かった、よっしゃぁぁ、と握った拳が力無く下ろされた。
扉の前に立つ人影がある。
ベイであった。

「ヤバイ」

「とりあえずそこの部屋へ」
二人は手近にあった扉を開けた。
奇妙な光に溢れたその部屋の壁は、絵で埋め尽くされていた。
少女達の絵である。
その中に眞子の絵もあった。

「眞子だ」

「麻理ちゃん。この絵、なんか変だ」

「うん。なんだろ。何か違和感がある」
二人は現在の状況も忘れ、絵に見入った。
いずれもが美しい少女である。

「判った」
志郎が擦れた声で、そっと言った。
「この子達、みんな泣いてる。僕には判る。何か訴えている」

「なんで判るのよ。この絵の子なんか、綺麗な笑顔じゃん」

「違う。なんでだろ、僕、声が聞こえるんだ。出してくれって言ってる」