正樹は気晴らしにパチンコ屋に向かった。
少しの間でいい、何も考えずに過ごしたかったのだ。
台はどれでも良いが、できれば周りに人が居なければ有り難い。
がらんとしたコーナーを見つけ、適当に座る。
しばらく遊んでいたが、今ひとつ入りこめない。
背後の二人連れが原因だった。
やたらと元気な声で連れを応援している女性がいる。
その女性のセリフが、俄然気になった。

「徹さん、やったやんか。ほら、わたしが言うた通りやろ、
がんばってリハビリしたら、またパチンコできるでぇ」

リハビリにパチンコ。
なんだそれは、と振り返った正樹は。そこにパチンコ屋という
環境では有り得ないものを見た。
女性の連れは車椅子に乗った老人だったのだ。
自由が効かないらしい右手を左手で押さえながら、
球を打ち出している。

「あ、ほれほれ、もっと天釘狙わなアカンがな」

「わぁっとる。ちぃと黙っとれや、春美ちゃん」

そう言われても、春美と呼ばれた女性は横合いから
茶々を入れ続けた。
キラキラした目で、心底嬉しそうに男性を見つめている。
「あ。あぁっ!リーチや、プレミアムリーチやで、徹さん」

「お、おお。こりゃ確変決定やな」

777と数字が揃った瞬間、二人は歓声をあげた。
傍で聞いている正樹も何だか微笑んでしまうぐらい、
開けっぴろげな喜びであった。