丸岡忠二、67歳、無職。
年金暮らしの年寄りが只一人で暮らしている家だ。
調査によると、家庭内暴力に耐えかねた妻は
何週間か前に出ていったらしい。
それ以来、丸岡は無口になり、家に引き篭もった。
その頃からゴミを集め始めた。
最初は、まだ役に立ちそうな粗大ゴミであった。
そのうち、徐々に見境が付かなくなってきた。
雑誌、空き缶、ダンボール。
自転車、植木、生ゴミ。
ゴミ屋敷に変貌を遂げるまでに一ヶ月も
掛からなかった。

向井は地元で、まごころ不動産という会社を経営している。
会社とは名ばかりの小規模な不動産屋に過ぎない。
そのまごころ不動産が、懐に似合わぬ土地を手に入れたのが
悲劇の始まりであった。
借金返済に追われた農家が、畑を売り払ったのだ。
地図で確認すると、駅にも近く、利便性に優れている。
向井は自分の土地を担保に入れ、そこを買った。
マンションを建てれば大きな利益が転がりこむ。
ワンステップ上がる為には、絶好の機会に思えた。

そして何より、その当時、丸岡の家はまだゴミ屋敷では
無かったのだ。
どこにでもある家だった。