「どうだい、マリアさん。妹さんの様子は。」

「ありがとうございます。どうやら、ふさがってた
目も見えるようになってきたみたいで。」

「何ができるわけじゃないけれど、ご飯だけは
回せるからね。遠慮なく言ってくれ。」

マリアとマリンは、冬の朝に捨てられていた。
妹のマリンが右眼に傷を負っており、
マリアが懸命にそれを舐めていた姿を
ハナクロは思い出していた。

「マリアさんが頑張ったからだよ。なんにしても
良かった。じゃあね。」

ハナクロが次に向かった先は、さとこの所である。
ついこの間、捨てられたばかりの子猫を
我が子のように可愛がり、ミニーという名前を付け育てていた。
不思議な事に、母乳さえ出るようになっていた。

「さとこさん、こんにちは。ミニ-ちゃんはどう?」

「おや、ハナクロさん。おかげさまでやんちゃな
もんですよ。ミィミィ泣いてたのが嘘みたいで。
ほれ、ミニ-。ハナクロさんに挨拶しなさい。」

「おじちゃんこんにちは!」

「はいこんにちは。ミニ-ちゃん、元気に
なったねぇ。お母さんのおっぱいが余程
美味しかったのかな。」

「どうです?ハナクロさんも一杯?」

「あはは。遠慮しておきます。ミニ-ちゃんに
怒られてしまう。」

いつもと変わらぬ穏やかな朝の風景であった。
だが、その風景を壊す者達が近づいている事を
このとき、ハナクロはまだ知らなかった。