次の宿は白須賀。
三人と一匹は並大抵の脚力ではない。
急ぎながらも、十兵衛は太郎丸の身の上に起こった話を聞いた。

「そうか、親父殿は亡くなられたのか…」

「おじさん、お父を知ってるのか?」

「あぁ、昔な。こてんぱんにやられた」

「あぁ、そりゃ駄目だよ、おじさん。お父は
日本一強かったからね」
自慢気に胸をはる太郎丸。

「その茜という娘は?置いてきたのか」
何気ない十兵衛の問いに太郎丸の頬が染まった。

「あ、ああ。ばあちゃんの世話をしてくれている。
ばぁちゃんもえらく気に入ってさ。俺の…嫁に
なれなんて言い出すんだ。」
言いながら、さらに頬が染まる。

「そうか、ならば尚更早く江戸に着かねばな」
白須賀の宿に入った。
ここもまた、街道を行き交う旅人達で賑わっている。

あれほど元気だった太郎丸が、大人しくなっている。
言い出し難そうに口を開いた。
「おいら、あんまり金無いからさ、この先の河原にいるよ」

「何を言う。そなたは用心棒だろう。常に我らの
そばに居てもらわねばならぬ。なぁ、又佐」

「さよう。さ、参りますぞ。無論、これも用心棒代に
含まれますからな」

「本当かい?じゃあ、しょうがないな、付き合って
やろうかな。あ、韋駄天、お前は駄目だ。
あとでご飯を持っていってやるからな。」
不満気に鼻を鳴らす韋駄天を残し、一行は
宿に入った。


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