「今のおまえが放てる風がある。
それをよく考えてみなさい」

風太は家に帰りました。
母さんは庭で花の手入れをしていました。

「母さん。ただいま。…ごめんね」

振り向いた母さんから、春の風が吹いてきました。
暖かい、穏やかな風。

そうか。
その時、風太は判りました。

僕の風が判った。

それは、たんぽぽの綿帽子を飛ばす風。

猫のヒゲを撫でる風。

鯉のぼりを泳がせる風。

村の子供達の凧をあげる風。

そして、母さんの涙を吹き飛ばす風だ。

どれもみな小さな風だけれど、必ず、
微笑みを呼ぶことができる風だ。

「母さん、僕、町にたんぽぽ飛ばしてくる」
風太は走っていきました。

見送る母の手から、暖かい春風が吹き始めました。
その風は、春を心待ちにしている北の国に届き、
桜の花を満開にしたのでした。


皆さんの町にも、たんぽぽがありますか?

その綿帽子が、風に乗ってふわふわと飛んでいったら、
きっと風太が近くにいますよ。