「これな、爺ちゃんに食べてもらお思てな。これやったら
柔らかいし、甘いし、美味しいから食べれるよ」
答えるのもそこそこに、居間に向かう。

「爺ちゃんただいま」

「おう、進か。どやった、祭は」

「最高や。爺ちゃん、お土産や。これやったら食べれるやろ」

進が差し出したベビーカステラを受け取り、爺ちゃんは
しばらく何も言わずに袋を見つめた。
「どしたん?嫌いやった?」

爺ちゃんの瞳から大粒の涙が後から後から溢れてきた。

「爺ちゃん」

気がつくと、いつの間にか背後には母が立っていた。
母も泣いている。

「違うんや、進。わし嬉しゅうてな、ありがとな。爺ちゃん、
これ、大好物や。いただくわ、ほんまにありがとな」

母は割烹着で涙を拭きながら台所に向かった。

「進、今日は特別に玉子焼きにケチャップかけたげるからな」
台所から聞こえてきた母の声に進は歓声をあげた。

爺ちゃんは一つ一つ、噛みしめるようにベビーカステラを
食べた。
あんなに泣いてたら、カステラふやけるやんなぁと
進は心配していた。