逃げよう、と思ったそうだ。
ホラー映画みたいに主人公がわざわざ
近づいていって、結局死ぬ、なんて
事は馬鹿げてる。

後ろ向きのまま、そっと逃げようと
した途端、ピエロは頭だけ90度動かし、
何か喋った。
『えねみが。むえるて。』

「待て、何やそれ。」
「わかんない。でもハッキリそう言った。」
「スペイン語っぽいな…後で調べたるわ。」

『えねみが。むえるて。』
そう呟きながらピエロはフワフワと近づいてきた。

錯乱した彼女は、どうしたか。

なんと手近にあった殺虫剤をかけた!
一瞬止まったピエロを傘で思い切り叩き、
必死で逃げてきたそうだ。

俺はそこで気付いた。彼女が裸足だった事に。

「だから帰れない。怖い。どうしよ。」
「うーん…とにかく明るくなってから動こ。
俺もホラー映画みたいに殺されるのはイヤや。」

翌朝。俺は友人から借りたテニスのラケットを
持って由香里の家に行った。

次で最後。