その夜、正樹は母と一緒の部屋に泊まった。
布団を並べて眠るのも久しぶりだ。
何となく、話しかけるのが照れくさく、正樹は黙り込んでいた。

「正樹」

「なに。母さん」

「ちょっと外が見てみたいんだけどね、構わないかい」

「いいよ。なに、今頃」

「あのね、わたし、今日あの人達に見学会のこと話したんだよ。
みんな、羨ましがってね、そんな立派な所を用意してくれるなんて、
親孝行の手本のような息子さんだって。
ちゃんと御礼言いなさいって。
正樹、ありがとね」

正樹はまだ、黙り込んだままだ。
照れているのではない。
胸がつまってしまったのだ。

「皆が言うんだよ。うちには温泉は無いけど、五右衛門風呂なら
ある。デジタル放送とか言うのはないけど、仲間を見てるだけで楽しい。
華道や茶道のクラブも無いけど、色んなこと教えあってる」

正樹には返す言葉が無い。
今、母が言っていることは、何よりも彼自身が感じていたことなのだ。

「でね、何よりもうちには、物凄いシャンデリアが有るってぇのよ。
夜、外に出れば判るって」

正樹は小雪を支えながら、縁側から庭に出た。

「ああ、これは」

そこには満天の星空があった。
この世のどんなシャンデリアよりも美しく輝いている。

「あんたさ、覚えてないだろうねぇ」
母が夜空を見上げながら言った。