寛永寺。天海僧正が開基したと言われる。
その目的は、当初より明らかであった。
江戸という都市を物理的な攻撃からではなく、
呪術的攻撃から守っている。
誰もがそう、思っていた。
だが、それは違っていたのだ。
その門前に十兵衛達一行は立った。

境内は人で溢れかえっている。
皆、熱にうなされたように本堂を目指す。
老若男女を問わず、押し黙ったままだ。
彼らに共通する点がもう一つあった。
異様に光る瞳。

十兵衛達一行は、寺から一歩離れた場所で
群れを見ていた。
韋駄天が低く唸りつづけている。

人々の群れの中で、男が一人ふらついて倒れたが、
誰も起こそうともしない。
皆、踏みつけていく。
恐ろしいことに、踏まれた男も悲鳴一つあげない。
おそらく、骨が砕け、身も裂けているに違いないが、男は悲鳴どころか
文句一つ言わずにその場にうつぶせている。
寺の中から幾人かの僧が現れ、その男を本堂に連れて行った。
跡には血溜まりだけが残った。

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