あの頃のプレイを聞き返してみると、自分でも驚いてしまう。

こんなことが出来たのかと。

何回かライブをこなしている内、あるプロダクションからデビューしないかとオファーが来た。

だが結局、その話は実現しなかった。
俺達には、腕があった。
曲も最高だった。
けれど、華が無かったのだ。


俺は夢破れて、京都に職場を移した。
バイト先での働きが認められて、バイトの身の上で本社転勤を命じられたのだ。

いつしか俺のバンドはバラバラになった。

俺の手に残ったのは、デモテープが一本だけだった。


新しい職場はギター売り場。
客の前で、その客が好きなミュージシャンを聞く。
即座に弾いてみせる。
それだけでバカみたいにギターが売れた。

俺は磨き続けたテクニックをそんな事に使ったんだ。

だけど一曲だけ、ごめん、それ知らないやと断った曲がある。

その曲はMOVE OVER。

魂の最後の砦だったのかもしれない。

だが、俺のギターの腕は思わぬ幸せをもたらしてくれた。

社内のクリスマス会で、ギターを弾く俺を見つめる女性がいた。

俺の手はギターのネックを離れ、その人の手とつながれた。
俺はその人と共に歩く道を選んだ。



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