「誰にあげようとあたしの勝手だろ!
毎日どっかで誕生日は有るんだ。
余計な心配しないでおくれ。いいかい、一番デカいケーキだよ。
入ったら連絡しな」

よしは、店頭の人形を一つ小突いた。
ゆらゆらと揺れる人形に話しかける。

「あんたも大変だねぇ。人形とはいえ、会社に
怒鳴り込みたいぐらいだろうに。
でもね、それでもニコニコ笑ってなさい。
泣いても笑ってもどうしようも無いなら、
笑ってる方がマシだからね」

人形に言う態を装って、自分に言っていることは明らかである。
雅夫は被っていたコック帽を脱ぎ、深々と頭を下げた。
素直に声が出た。

「あ、ありがとうございました!」

負けてたまるか。
こんな納得の行かない負け方を認めてたまるか。ショーケースは空っぽだが、その中には俺の誇りが詰まっているんだ。

拳を握り締める雅夫の横で、人形がニコニコと微笑んでいた。