「何処って…決まってなかったよ。あちこちを
うろうろしてて、気がついたらここに居たのさ。」

「また、そのうろうろしていた頃に戻れる?」
チロは黙り込んだ。

ハナクロはヒゲを震わせて続けた。
「僕たちはゴミみたいに捨てられた。
どれほど小さくても、病気をしていても、
連れていってと泣いて頼んでも、
それでも捨てられた。微かに記憶に
残っていた名前だけが宝物だ。
名前すら無かった者もいる。」

皆、聞いている。
ミニーさえもおとなしく聞いていた。

「でも、自分で、自分の未来まで捨てることは無い。」

ハナクロのヒゲが更に震えた。
「僕は決めた。たどり着いてみせる。」

「判ったよ。行くよ。行けばいいんだろ。
くそ、まぁた旅が始まるのか…」

「ありがとう、そうと決まれば、冬に
なる前にここをすぐに出よう。
…トラさん、どうしたの?」

ハナクロがトラに声をかけた。
トラは群れから一歩下がっていた。