私は電話ボックスを
探していた。

この町に有るという
不思議な電話ボックス


その電話は本当に望む
人にしか見えない。
そして世界中の誰と
でも、時と場所を
越えて話す事ができる


ただし、それはクリス
マス・イブ一日だけ。


私にはどうしても
話したい相手がいた。


散々探し廻って、
ようやく見つけた
それは、長い行列が
できていた。

時刻は既に夜11時を
回っていた。

後一時間しかない。
とりあえず最後尾に
ついた。


幸いにも、行列は
どんどん消化されて
いった。
他の人をいたわる
気持ちで溢れた人達
ばかりだった。

もっとも、そんな人
じゃないと、この電話
ボックスは見つけられ
ないのだが。


次が私の番だ。

後5分ある。充分だ。


だが、私の前の父娘
連れがなかなか出て
こない。

私の視線に気づいた
のか、父親の方が娘に
声をかけた。


まだ3歳ぐらいの子だ。

私は父親に尋ねた。
「失礼ですが、
どなたに電話を?」

「申し訳ありません。
この子の母親でして。
一週間前に亡くなった
ばかりで…」


私は夢中で話す少女を
見つめ、父親に気に
しないよう言った。
ようやく電話を手に
した時には、残り10秒
を切っていた。

受話器を耳にあて、
想いを込める。

『元気か。』

「父さんかい?俺、
父親になったよ。


『そうか。うん。
そりゃ良かった』

「父さん、最後まで
家に帰らなくて
ごめんよ。大好き
だよ、父さん…」


返事を聞く前に電話は
切れた。


父は許してくれた
だろうか。


家に帰ると妻が微笑み
ながら、私を出迎えて
くれた。


「ぼうずは?寝た?」


「寝てたんだけど、
ついさっき一瞬だけ
起きたの。上を見て
ニコニコしてたよ。
誰か見えてるのかな」


父だ。
父が見に来てくれた。

父は私を許してくれた
のだ。

多分、ずっと前に。