「随分汚れた川だな、よし、少し補給しとくか」
そう言ってミネラルウォーターを取り出し、皿にかけた。
次いで、甲羅を取り出す。

「河田さん、駄目だよ、皆にばれちゃう」

必死で止める私を優しく押し戻し、河田さんは言った。
「水に棲む仲間を見殺しには出来ない。人間を捨てて
河童に戻れば、法律に縛られることも無い。
また何処かでほとぼりを冷ましてから出直すさ」

Tシャツを脱ぎ去り、甲羅を装着した。
たちまちクチバシが黄色く尖り、体の色が緑色に変化し始めた。
周りの人々は、悲鳴をあげて離れていく。

「よし、これで最強モードだ。じゃ、行くよ。
緒川くん、いつかきっとハドソン川で」

そう言い残して川田さんは、美しい弧を描いて
川へ飛び込んだ。
ただ一掻きでイルカの元へ辿り着く。
イルカを優しく抱きしめ、何事か囁いている。
イルカも理解したのだろう、大人しく言うことを聞いている。

「よし、海へ行こう」
イルカを伴い、河田さんは泳ぎ出した。
マスコミの取材陣が乗ったボートが近づいて行く。
テレビクルーがカメラを構えるのが見えた。