「ハナクロ。まさか、あんたもあんな
いい加減な噂を信じるわけじゃないだろうな。」

「チロ。君はどうなんだい?僕は皆を連れて
そこを目指そうかと思うんだ。」

「ばかな。何処にあるのかも判らない場所へ。
小さな子供も居るんだぞ?」

ハナクロはチロを正面から見据えた。
「だからこそ。だからこそ、君にも一緒に
来て欲しい。皆で助け合って行けば、必ず行けるさ。」

皆の方を振り向く。
「すくなくとも、ここで保健所を待つだけの暮らしよりはマシだ。
僕と一緒に行く者は、一歩前に出てくれ。」

「あたし達、行きます。」
声を揃えマリアとマリンが真っ先に言った。

「僕も行く。ハナクロさんにはお世話になった。
今度は皆で助け合う時だ。」
大きな声でドドも前に出た。
皆が次々に前に出た。

「お前ら、どうかしてるぞ!ここが駄目でも
この近所で暮らしていけばいいじゃないか。
保健所だって、しょっちゅう来るわけじゃない。
来たら逃げればいい。違うか?」
チロが声を荒げる。

「ねぇ。チロ。君、ここに来るまでは何処に居た?」
ハナクロが優しく聞いた。