先に泣いたのは敏夫の方だった。

「おぉしあけございません」

何度も何度も繰り返す。
「いいのよ、翔ちゃん」

「でも、おかさんもおとさんも泣いてるし、僕わるいことしちゃったし」

ようやく身を起こした敏夫が、翔太に優しく言った。

「今回は不問に処する。次回からは充分注意して励みたまえ」

翔太は、きょとんとして父と母を見ている。
「なんて言ったの?」


早智子は、ようやく笑顔を取り戻して答えた。

「あなたのことを信じているから、気をつけて、がんばってねということよ」

救急車が到着した。

どちらが同乗するかで少し揉めたが、結局早智子が押し切った。

翔太の怪我は骨折だけで済んだ。

病室に弁当を持ち込んだのは良いが、スパイシーな唐揚げの香りが病棟中に満ちてしまった。

「申し訳ございません」敏夫が家族を代表して謝る。

さすがに、年輪が刻まれた詫びであった。