脱走は意外と簡単だった。緩やかに動く彼を見て、大抵は油断してしまうからだ。

いざとなれば、彼は
素早く動く事が出来た。それは、海を見ようと決めた日から続けた訓練の賜物だった。

警察が気づいた時には
彼はもう下水道に潜り
込んでいた。

『やったやった~
やるなぁ僕。こんな
所で終わるわけには
いかないんだ。

さぁて…海はどっち
かな?多分、水が流れていく先が海だと思うんだけど。』


彼はゆっくりと泳ぎ始めた。

元々、清流にしか
住めない山椒魚に
とって下水は耐えられ
ない筈だが、海を
見たい一心で進む彼
には、それは些細な事だった。


しかし、汚れきった水
は確実に彼の体を蝕んでいた。


そしてもう一つ。

都会の下水道には、
彼を餌としか見ない
奴らがいた。