もう一度確かめる。
筆跡に覚えは無い。
立川先生が書いたのではないか、と思ったが
先生の筆跡とは異なる。
先生は筆圧が強いのだ。モンブランを何本も書き潰しているぐらいだ。
しかもその字体には本人が気付かない癖がある。
何枚も生原稿を見ている津川君の目を誤魔化すことは出来ない。
編集部の誰かが書いたかとも思ったが、それも違う。
無理矢理書いた文字にしては、あまりにも自然である。
津川君、鳥肌が納まらない。
冷やっこい汗が背中に滲む。

「せ、先生どうしましょ…僕、死ぬのでしょうか」

「何を言ってるのだ、津川君。情けないことを。
こんなものは都市伝説だと言ったのは君だろう。
…津川君、君、私と一緒に温泉に行かないか。」
こんな時に何を言い出すのだ、と津川君は初めて
先生を睨みつけた。

「いや、実はだね、熊野の山奥にある温泉に行こうと
思っていたのさ。無論、温泉が目的ではない。
その近くにある神社、ここが霊験あらたかなのだよ。
こんな手紙の呪いなど、一発で解いてくれるらしい」

七へ