(おや?)

蒲田の後を尾行している男がいる。
気をつけてみないと、それとは判らないが、あれは探偵だ。

どうやら奥さんは、興信所に調査を頼んだらしい。

俺は心優しい男である。この暑い中、頑張って働いている探偵さんの仕事を楽にしてあげるべきだ。

そいつの近くを通り過ぎながら、わざと大きな声で蒲田を呼び止めた。
「おい蒲田、連絡先教えとけよ。まさかUSJに行ったとは言えないだろ?奥さんから電話あったら知らせてやるからさ」

「あ、そりゃすまんな。北区の新半球ホテルだ」

探偵は熱心にメモを取っている。
人助けは気持ちよいものだ。


翌日、俺は蒲田の奥さんを見かけた。
何やら長い包みを持ち、みどりの窓口に居た。

「新大阪一枚」
大阪に向かうらしい。
どうやら探偵はキッチリと伝えてくれたようだ。

「あれ、蒲田くんの奥さんじゃないすか。大阪行くんすか」

「あ、こんにちは。ええ、ちょっと野暮用で」

上手く言えないが、何だかヤバい目つきだ。
思い詰めたというか、覚悟を決めたというか、虚ろではあるが真っ直ぐな目だ。

「どしたんすか」

「ちょっとお料理に」

そう言って持っていた包みを掲げた。

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