目覚た途端に、居ても立っても居られなくなった。

私は靴を履く間さえ惜しむように、裸足で駆け出した。

見ると、既に村人達が集まっている。

冗談ではない。
あの枝は私のものだ。
くびら様にぶら下がる楽しみを奪われてたまるか。

あぁ、夜のくびら様も見事である。

余計なライトアップなどされずとも、月明かりだけで充分だ。

その白い花びらが月明かりを受け、冴え冴えと輝いている。

ふらふらと近づいた私の手が縄を掴んだ。

村人達が見守るその前で、そっと愛おしむように首に縄をかける。

少し引っ張ってみた。
大丈夫、しっかりした縄だ。

一気に地面を蹴り、私は川の上に浮かんだ。

たちまち息が詰まる。
鬱血した顔から目が飛び出しそうだ。

だが、楽しい。

思った通りだ。

水に浸された爪先が心地良い。

村人達の声が聞こえてきたが、最早、私には理解できなかった。


「今年もどうやら、くびれ様が終わったの」

「ほんに。どうなる事かと思うたが」

「うむ、この客人が来なければ、一人、首をくびらねばならんところだて」


世には、括れ鬼という祟り物がいる。
括れ鬼は、首を吊って死んだ者の変化である。
それは、次に首をくくる者が現れない限り、成仏できない定めという。



くびら様の白い花びらが緩やかに赤く染まっていく。

ひとひら落ちる花びらを村人達は慌てて避けた。