「聞いた?高木屋、閉店だって」
隆志の言葉で僕達は手を止めた。
美術の授業中だ。

「マジ?なんで?」

「噂だけどさ、こないだ泥棒入っただろ?
あの時、支払い用の金盗まれちゃったんだって」

「え。ヤバイじゃん」
俊彦の絵筆から絵の具が落ちる。

「こらそこっ!授業中は私語禁止っ!」
美術の坂本先生に睨まれた。

僕達はとりあえず、お互いの顔の
絵を完成させることにした。

放課後。
高木屋は、やっぱり閉まってる。

「ほんとだ。いつも開いてるのに」

「声掛けてみようか」
隆志の提案に皆うなずいた。

「ばぁちゃーん!居るのー?」

「おーい」

ゴトゴトゴト、と雨戸が開いた。
中から、高木のばぁちゃんが顔を覗かせた。
「あぁ、あんた達かい。悪いけどね、店は、しばらくお休みだよ」

「ばぁちゃん、店閉めるの?」

「お金盗られたってほんと?」

「いくら盗られたの」
僕達の矢継ぎ早の問いかけに、ばぁちゃんは
ちょっと困った顔で答えてくれた。

「知ってたんかね。そうなんだよ、ばぁちゃん
困っちゃってねぇ…こんな貧乏な駄菓子屋なんか
狙わなくても良さそうなもんだけど…」
ばぁちゃんのシワだらけの顔に涙が溢れた。