質素だが、清潔な小屋だ。
部屋の片隅に小豆が積んである。

小豆洗いは意外と話し好きな好々爺であった。
知らぬ間に話が弾み、私はその夜、小屋に
泊めてもらうことになった。

息子は旅の疲れからか、隣の部屋で既に
寝ている。
小豆洗いは、その寝息を聞きながら
私に問うた。

「なぁ、小豆相場たらいうのは、そんがに簡単なものらろか」

「…うーん、割と難しいと思いますよ。変動が激しいですから」
小豆洗いはしばらく、考え込んだ。

「てんぼこいて。本当の相場師がROLAXなんて時計する
はずがないねっかう」

「…私もそう思います。ただ、息子さんはお父さんの
顔が見たかったんではないでしょうか」

「づくなしが。」
意気地なしが、と悪態をついて小豆洗いは寝てしまった。
私もいつの間にか眠っていた。

翌朝早く、小豆洗いに礼を言って小屋を出た。
「ありがとうございました。また遊びに来ますね」

「あぁ、いつでも来てくんなせや」

息子も名残惜しそうにしている。
結局、小豆洗いは息子に言葉一つかけてやらなかった。

いよいよ、という時、小豆洗いは息子を呼び止めた。


最終へ