「この首、人に見られると後が面倒ですね。
消えてもらいましょう。」
銀色の猫の前足から眩い光が放たれる。
その光が当たった途端、首は燃え始めた。

「げに猫又とは恐ろしき妖力を持つものよ。」
半ば呆れた十兵衛に、これもまた
呆れたように銀の猫が返した。

「放っておいても恐らく大丈夫でごさいましたね。
貴方様の左手は既に小太刀を握っておられた。
そして今も握られたままだ。さすが、柳生様。」

「ほぅ。そこまで見抜かれておるか。
察するにおぬしが猫又の総大将殿であらせられるな。」

「はい。皆からは先生、とだけ呼ばれております。」

「名は無いのか」

「名、ですか。忘れてしまいました。
何故だか、いつの時代でも
先生と呼ばれてしまいます。
そんなことより、ミチクサを助けていただき、
誠にありがとうございました。」
ミチクサは既に先生の隣に控えていた。

「かまわぬ。俺は猫が好きなんだ。
今回の事も猫好きが高じてやっただけのこと。
最も、これから先はおぬしが居るから大丈夫であろうがな。」

先生は少し考え込みながら、
「それなんですが。御相談さしあげたい事がございます。
京まであと少し、お時間を頂戴できませんか」

「ふむ。ならば歩きながら話を聞くとしよう。
なかなかに面白いことになってきた。」