ところが二日目で挫折した。
そんなに世の中は甘くない。
とある田舎町で金が尽きた。
風邪をひいたようでもある。
すきっ腹と高熱を抱え、町を彷徨ううち、芳一は古寺に迷い込んだ。
阿弥陀寺と書いてある。
親切な和尚の介抱を受け、芳一は徐々に回復していった。

「芳一さんとやら、あなた、琵琶を弾きなさるか」

「は、少々嗜む程度ですが…」
芳一は和尚の目の前で得意の平家物語2006年バージョンを演奏した。
古寺に相応しい古狸のような顔に涙を浮かべ、
和尚は聞き入った。

「素晴らしい。どうぞ、お体が回復するまでこの寺に居なさるといい」

「ありがとうございます」

「ただし」
「ただし?」

和尚は芳一に顔を寄せ、声を潜めた。
「裏山に行ってはなりませぬぞ。古い一族の墓がありますからな…」

ところがある夜、和尚が留守の時のこと。
突然一人の武士が現われた。

三へ