悲鳴をあげなかったのは、英雄に度胸があった
わけではない。
先に悪魔が話し掛けてきたからだ。

「マイスター英雄。取引しないか。
おまえを世界一のマジシャンにしてやろう」

「世界一…?」

「あぁそうだ。俺と取引しろ。お前の魂と
引き換えに、魔術を使えるようにしてやろう。
手品なんかじゃない、本当の魔法だ」

「信じろというのか。おまえ、頭大丈夫か?」

悪魔は返事の代わりに、落ちていた空き缶を拾った。
手の上に乗せ、ふっと息を吹きかける。
たちまち空き缶は、鳩に変わり、空に飛んでいった。

「こいつは手品じゃない。魔法だ。お前は、
これで世界を手玉に取れる」

英雄は吸い寄せられるように悪魔に近づいた。
「世界一…どうすればいい?」

「簡単だ。この契約書に血印を押せば良い」
チリ、っと指先に痛みが走る。
羊皮紙のような柔らかい紙だ。
その上に英雄の血印が染み付く。
こうして、英雄は世界一の魔術師になった。

三へ