それでいて、客はウケにウケる。
小ん太は、噺もそこそこに動物の物真似をするのだ。
噺の中に出てくるウグイスや猫、蛙など、目を閉じて聴いていると本物のようであった。
天性の勘とでも言うしかない、まさに芸人である。

見かねた師匠や兄弟子が意見をしても聞く耳を持たない。

「あたしゃあ、これが気に入ってるん」

へらへらと笑って動じない。

「ちったぁ朝平を見習いなよ」

「へん。あんな朴念仁、はなから相手にゃしてません」

妙に人気があるものだから、師匠もそれ以上は言えなかった。

そうこうする内に、朝平は独演会をするまでになった。
横丁にある寺を借りて、身内だけながら大層な客を集めた。
大盛況である。

演目は文七元結、三遊亭圓朝の作といわれた名作だ。
噺が佳境に入り、いよいよ手代の文七が現れて、というところで、いきなり寺の外で猫が喧嘩を始めた。

「フーッ!」

「ナァーゴ」

大変な騒ぎで全く噺が聞けない。
朝平は、身の不運に悔し涙を流したが、相手が猫では誰に怒るわけにもいかない。
泣く泣く会場を後にした。

「うふふ。行ったね」

何とも呆れたことに、床下から小ん太が現れた。猫の鳴き声は、小ん太迫真の物真似だったのだ。