「美津江っ?!」
駆け寄って助けようとした麻美は、その時見た。
美津江の背後に少女が居る。
手足にしがみついたまま、麻美を見てニヤリと笑った。

「あ、さみ…逃げて」
美津江は、最後の言葉と共にキャタピラに潰された。
長さ1m弱の小さな穴一杯に美津江の血と肉が、みっしりと詰まった。



冬が近づき、凍えるような朝が多くなる。
それにも関わらず、公園のベンチで横になる少女がいた。

麻美である。
麻美はあれからずっと、箱の無い場所を選んで暮らしている。
家にはもう、帰れない。警察がうろついているのも二の足を
踏む要因になった。

公園、川原、路上。
箱の無い所はそれほど多くは無い。
美津江の言った通り、町は箱で溢れているのだ。

食べ物は生ゴミの袋を漁った。
破いてしまえば、袋は箱では無くなる。
風呂にも入れない為、公園の水飲み場や川で体を拭った。
もちろん、トイレも外だ。

もう既に人ではない。
野良犬でさえ、眠る時は何かしら箱を探す。
麻美は野良犬以下の存在になった。


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