昔の話である。
関西のとある動物園に、京太郎と都子というゴリラの夫婦がいた。
動物園の創立当時からの人気者である。
人間が羨むほど仲の良い夫婦であったが、
都子が先に逝ってしまった。
残された京太郎は、たちまち元気を失った。
餌も食べずに、檻の片隅で壁の方を向いたまま
何時間もジッとしていることが多くなった。
飼育担当者は大変に心を傷め、何とか気晴らしが無いものか
と色々と手を打った。
本当ならば、新しい奥さんを探してくれば良いのだが、
絶滅危惧種である為、なかなか思うような相手に巡り会うこと
はできないのだ。
また、年老いた京太郎が新しい家族を受け入れるとも
思えなかった。

大きなテレビでアフリカの草原を映し出したり、
壁全部に樹木の絵を描いたり、
食べ物を変えてみたり、あらゆる工夫をしたが
一向に元気にならない。
せめて、都子の剥製が有れば良かったのかもしれないが、
作業に手間取っていて間に合いそうに無かった。
替わりに都子の写真を置いてみたが、余計に気を滅入らせてしまった。
ほとんど鬱の状態になってしまったという。
それほどまでに奥さんを愛していたのだろう
と誰もが皆、涙をこぼした。


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