「おやじ…何やってんだよ」
憲二が驚いたのも無理は無い。
隆雄は、どちらかというと小柄な男だ。
武道をやっているわけでもない。
それどころか、憲二が知る限り、スポーツそのものに縁が無い筈だ。
見たところ、何の変哲も無い中年親父である。
とてもでは無いが、この少年達に立ち向かえるとは思えない。
案の定、少年達は声を荒げて突っかかっていく。

「何だよ、おっさん。俺達に命令かよ」
「狩るぞ、こら」

けれども、口々に浴びせられる怒号も隆雄には効かないようである。
普段と全く同じ、何を考えているか判らない緩い表情を崩さない。

「なんとか言えよ、おっさん」

「ふむ。聞こえんかったかな。そこらへんで止めときなさいと言ったんだ」

少年達は益々激高した。
「おいおいおい、えらく自信たっぷりだな。よ?」

「なにやってんだよ親父}
小さく舌打ちしながら、憲二は震える足で少年達に近づいて行った。
とんでもなく恐ろしいが、父親を放ってはおけない。

「自信が無けりゃ、君たちに注意をしてはいかんのかね」

「なんだぁ?」
隆雄は返事もせず、少年達に割って入り、女性の手を引いて
連れ出した。