ねこやが借りてきたオルゴールは、まさにあの写真そのままの
ものだった。
何でも、芦屋にあるオルゴール館から借りたらしい。

「こんな大事なもの、よく借りれましたね」

「あそこの館長には貸しがあってねぇ」
熊の問いにねこやはニヤリと笑った。
それが何かは聞かない方が無難だな、と思える笑いであった。

「ここに、ディスクをセットするのさ。ほら、時計に見えるだろ?」
確かにそれはホールクロックであった。

つくね亭には、すでに武良と、母の芳江、照美が来ている。
常連客も所狭しとひしめいている。

「母さん、待ってなよ、今聞かせるからな」
武良の呼掛けにも全く反応しないようだ。

「母さん…熊さん、ねこやさん、お願いします」

「あいよ。」
ねこやがスイッチを押した。

その途端、つくね亭に音が溢れた。
曲目はシューベルトの子守唄であった。
そのあまりの美しさに、誰もが皆黙り込んだ。

最終へ