「スイマセン アキコサマ チョットシタミスデスネ」
微かに白い煙を出しながら、ジローはクルリと目を回し、ペロッと舌を出した。
展示品の頃に、悪ガキどもが悪戯で書き込んだ動作だ。
余程うまく書き込んだのか、或いは基盤不良を起こしたか、
店が何度フォーマットしてもその動作は残った。

「何だいその顔は!もう本当にどうしてくれるんだい!」
そこから先は言葉にもならない。

―あたしの大事な紅茶セット。
もう二度と手に入らない。この
クソバカロボットのせいで―

「台所をさっさと片付けておしまい!」
そう叫ぶのが精一杯だった。

一人と一台の生活は、こうして派手に幕をあげた。
それからは、アキコの朝は怒鳴り声で始まるようになった。

「ジーローッ!!どこだいっ!」

返事は裏庭から聞こえてきた。
「ハイハイ アキコサマ。アマリ オオゴエヲ
ダサレルト オカラダニ ヨクアリマセンヨ」

「大声を出させてるのはあんただろうが!
なんでロボットのくせに、のんびりした声なんだか!
庭の掃除は済んだのかいっ?!」

杖の音を高らかに響かせながら、亜紀子は裏庭に向かった。
うっすらと汗が滲む。