男はいつものように
出勤し、自社ビルの
前に差し掛かった。
不動産業界の寵児
として活躍し始め、
わずか三年で、男は
この自社ビルを
建てた。

その自慢のビルの前
に、今朝は沢山の人
が群がっていた。

なんだ。あいつらは。
…マスコミじゃねぇか。
何かやらかしたか?
男は携帯を取り出し
秘書に連絡を取った。

悲鳴に似た声で
秘書が電話に出た。

「し、社長~っ!た、
大変です。今朝の
ニュースご覧に
なられてないですか
!」

「俺がテレビを見ない
のはお前、知っとる
だろう。何があった。」

「い、芋葉建築事務所
が構造計算書の数字
を誤魔化してました。
当社の物件は全て、
震度5で倒れます。」

「な…!」

男は声も出せぬまま
携帯を落とした。

どういうことだ。

男が驚いたのは、
芋葉の誤魔化しの
件では無かった。

何故バレたんだ。

実は誤魔化しを指示
したのは男の方で
あった。

異常なほど安い
建築費で建てた
マンションを通常より
少しだけ安く売る。

それこそが、男が
短期間で自社ビルを
建てるまでに至った
秘密であった。