「ぐふふ、どこに逃れ様とも無駄だ。わしの獄炎砲からは逃れられぬ」
毘沙門天は、蝦蟇のように四つん這いになると、口を大きく開けた。
腹が大きく膨れ上がり、波打つ。
ごぼり、と言う音と共に口から現れたのは、大筒であった。
体内に巨大な大砲を仕込んであったのだ。

「むぅ…まずい」
十兵衛の声に重なるように笑い声が聞こえる。
屋敷の屋根の上にその声の主が居た。
「ほっほっほ、さすがじゃ毘沙門天。その腕はわしが後で
治して進ぜる。安心めされよ」
布袋であった。
既に袋の口は開かれている。

「おぬしら、まとまると手強いからの。一人づつ分かれてもらう。
そこの爺様。お前は先に行け。大黒天が待っておる。
恵比寿になってもらおうぞ。楽しみにしておくが良い」

止める間も無い。激しい吸気が又佐に絡みつく。
又佐は、己の長持を手にするのがやっとだった。
あっという間に袋の中に消えた。
「又佐っ!」
詰め寄ろうとする十兵衛を威嚇するように
毘沙門天が四つん這いのまま、素早く動く。


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