警察が追い回す中
、彼は一切の手出しを
せず逃げ回った。

人の命を奪うのは
もう嫌だったのだ。

目を閉じると瞼の裏に
浮かぶ女性、優しく
微笑むその女性が自分
の母だという事だけは
記憶に残っていた。

その記憶ともう一つ、
いつの間にか胸の
ポケットに入っていた
小さな花だけを道連れ
に男は逃げた。



逃げる途中、男は
一人の少女に出会った。

少女は男を見ても
逃げようとしなかった。

不慮の事故により
視力を失っていた
のだ。

男は、ようやく自分の
話をまともに聞いて
くれる存在を見つけ
た。

かすかに記憶に残る
歌を唄い、昔話をし、
母の思い出を語った。


空きビルに隠れ住み、
彼は少女と度々会った