「あなた?何処へ行ってたの」

政伸は返事しない。
「あなたったら」

「タバコを買いに行ってきた」

美智恵はその時、政伸の手から滴り落ちるものに気づいた。
「どうしたの?血が出てるわ」

「あ?いや、そこで犬に咬まれたんだ。大した傷じゃない。もう寝なさい」

政伸はそのまま、風呂場に向かった。
美智恵は、言いようの無い不安に襲われた。
が、疲れていたためか、またすぐに寝入ってしまった。

翌朝、政伸はまだ眠っている。
美智恵はコーヒーを淹れながら、テレビを点けた。

『本日未明、鈴峰市で殺人事件が発生しました。これは、一連の連続殺人事件と関係があるものと思われます』

鈴峰市?うちじゃない。美智恵は身を乗り出した。犯行現場に見覚えがあった。すぐ近所の公園だ。

『なお、現場には被害者のもの以外の血痕が残されておりました。犯人が、何らかの怪我を負ったものとして、付近の病院機関を捜索中です』


犯人は怪我をしている。犯行現場は、すぐ近所。犯行時間は未明。この三つの条件を満たす者を美智恵は知っていた。
ごく身近にいる人物。その人が、おはようと言いながら起きてきた。
美智恵は慌ててチャンネルを変えた。