結局俺達は二度とそのスタジオには
入らなかった。いや、入れなかった。
残りの日は、野外でハモリの練習をしたり
曲を作ったりして過ごした。

最終日前日。朝からの雨が降り止まない。
Mちゃんから電話がかかってきた。

「先輩、皆どうやら退院できそうですよ。」
「おー、そうか。良かったな。こっちは…
まぁ帰ってから説明するわ。」
「大体の事は判ります。それと、
明日何時出発ですか。」
「あ?10時やけど?」
「…30分だけずらせませんか?」
「…何でや?」

Mちゃんは帰って直ぐに、知り合いに
相談したらしい。なんでも、インディアンの
血を引く女性で、かなり強い能力を
持っているとの事だった。

その女性が言うには、合宿に行けなかった
メンバーや途中で帰ったメンバーは
守られていたから大丈夫と。
今、残っているメンバーが危険だからと。

結果的に、雨中での荷積みや、後片付けが
押し、30分どころか1時間出発が遅れてしまった。
バスに乗り、ようやくホッと一息ついた
俺達はラジオから聞こえるニュースに
声を失った。

『本日、10時、N県T高原で崖崩れがありました。
観光バスと乗用車が二台、土砂の下敷きになった
模様です。』


今回の話、恐ろしい事に全て実話です。
このインディアンの女性とは、その後も
長い付き合いになるのでした。