そのことが、正岡を救っていた。
彼は、そのタンクの中に、当時付き合っていた女を
殺して沈めたのだ。
重りを付けて、黒いゴミ袋に包んだ。
タンクの底まで沈んだ死体は、地下室の暗い照明では
全く見ることができない。
一旦隠しておいて、機会を見つけ、どこかに埋めようと
考えたのだ。

そして正岡は、そのまま、ビルを退去した。
バブルが弾け、ビルはほとんど廃墟同然になった。
結局、発見される事は無かった。
いつの間にか、人を殺した事すら忘れていた。

第三セクターが一帯を再開発するにあたり、
そのビルの取り壊しが決定したというニュースは、
正岡の記憶に激しい警戒音を鳴らした。

瓦礫を撤去する時に死体が出てきたら、
いずれ捜査の手が伸びてくることは間違いない。
彼は破滅である。

正岡はゆっくりとトイレから出た。
懐からライトを取り出し、地下室への階段に向かう。
エレベーターも動いているが、余計な音はさせたくない。
どの部屋もガランとしている。
無論、人の気配が有るはずも無い。
何故か誰かに見られている気がしてならず、
正岡は度々、後ろを振り向いた。

三へ