春の嵐が町を吹き荒れていた。
わずかに残った桜の花びらを散らしていく。
余程の物好きでない限り、こんな夜中に
外に居る者は居ない。。
だが、もしも空を見上げる者が居たとしたら、
己の目を疑ったのではないだろうか。
風が吹き荒れる夜空に、女が浮かんでいたからだ。



いつもながらの屋根の上。
いつものように、イブが居る。
一雨ごとに暖かくなってきた。
名も知らぬ小鳥の声など聞きながら、ヒゲの手入れに余念が無い。

屋根の上から見える近場の桜は、既に散ってしまっていたが、
緑を見るだけでも心がやすらぐ。
なかなかに風流だ。イブは一句捻ろうか、とさえ思っていた。

その風情を台無しにするものが飛んできた。
一羽のカラスである。
かぁ、とも言わず、じっとイブを見つめている。
少し大型である。羽を広げたら、イブとほぼ同じくらい。
繁華街によくいる種類だ。

二へ