「や、すまんすまん。今動かれると困るんだ。
着床期間ってのはデリケートな時期だからな」

「何のことだ」

「説明してやろう。今、お前に動かれると、お前の体に植え付けた菌が育たないんだ」

なんだ。こいつは何を言った。

「で、だな。上手く着床して無事育つとこうなる」

湯浅が部屋の間仕切りを開けた。

私はたまらず悲鳴をあげた。

そこには、横たわる女があった。
青白く腐った体から、冬虫夏草が何百本も生えている。

その一本をヌチャリと抜き取ると、湯浅は私の目の前にそれをかざした。

「立派なもんだろ。これこそがチベットに伝わる秘薬中の秘薬、玉碧冬虫夏草」

自慢げに胸をそらし、奴は歩きながら説明を続ける。

「こいつを探しにわざわざチベットの山奥まで行った。老僧を殺して、妻を騙して菌の付いた虫を飲ませてと、なかなか手間が掛かってるのさ」

大事そうに手に持った冬虫夏草を瓶に入れた。

「問題はだな、人の体に蓄積されている栄養素には限度があるってことだ。一人で約500本、それ以上は質が落ちて育たない」

湯浅がもう一つの間仕切りを開けた。

まるで冬虫夏草の畑だ、違うのは地面の代わりを人体が成していること。