「コンビニ弁当でええな」

「おす。ありがとうございます」

正直、泥に塗れたジャージ姿で飯屋に入るのは躊躇われる。
浩は、ありがたく源さんの後に続いた。
甘ったるい牛丼がやたら美味い。
そして何よりも冷たい水が美味い。
ガツガツと飲み食いする浩を見て、源さんはガハハ、と笑った。

「ほれ、昼からはこれ使え」
いつの間に買ったのか、浩の前に新品の軍手が投げられた。

「あ…、すんません」

「君、畑中っていうんか」

「そうっす。畑中浩っす」
何が気に入ったのか、その日以来、源さんは毎回浩を指名した。
要するに穴掘り要員である。
浩が一発で採用された理由はそれであった。


「到着っ!」
事務所のドアを肩で押して中に入る。

「おはようございます」

「おお、早いやないか」
赤銅色のオランウータンがニタリと笑って手を振っている。

「おはようございます、源さん」

「ん。じゃあ今泉さん、わしと畑中君で三丁目の木田さんとこ
仕上げてくるわ」

「お願いします。あ、畑中君、今日も暑いからね、
熱中症にだけは注意しとくれよ」
浩を採用してくれた今泉は、かなりの心配性であったが、彼でなくとも
心配したくなる天候が続いていた。

「異常気象ってぇやつだな。そやけど畑中君は大丈夫や」

なんでそう言い切れるんだ、と浩は額の汗を拭いながら思った。
ここへ来るだけでも倒れそうなんだけどな、と胸の中で呟く。