「だが生きている筈がない」
土方の目が据わっている。一番危ない時の目だ。
沖田が莞爾と微笑み答えた。

「生きているかどうかは問題じゃないでしょう。隊として、どう動くか。
その一点のみ。一度粛清すると決めた人物なら、例えそれが
偽者としても斬るのみ。いや、名を騙った馬鹿者なら斬るが必定」

簡単明快な理論である。
一度、敵とみなした者は、何があろうと斬る。
そうすることで新撰組は生きてきたのだ。
加えて、沖田の中には芹沢に対する負い目がある。
それは年々大きくなっていた。
その気持ちに決着を付ける為にも、偽者といえど
芹沢と切り結ぶ事には大きな価値が有る。
自ずと笑顔がこぼれた。

沖田は無理矢理に笑顔を押し殺すと、早速、目撃証言が
多くあった八坂神社に向かった。
このところ、胸の病は悪化していた。
できれば斬り合いの中で死にたいと望んでいる。
そんな沖田にとって、誰であろうと何も恐れることは無い。
土方もそんな沖田を知ってか知らずか、このところは常に
行動を共にしている。
先を急ぐ沖田を半ば小走りで追った。

「おっと」
ぶつかりそうになり、土方は慌てて止まった。

「沖田、急に止まっては危ないではないか」
文句を言いかけた土方を沖田が止める。

「し。土方さん、やっぱり都ってのは凄い所ですね。
ありゃ間違いなく芹沢局長だ」

四十四へ