「丑の刻参りというと、あれですか、藁人形をば釘で打つという」

「その通り。五寸という長大な釘にて人型に模した藁を打つのだな。
白装束に身を包み、頭に五徳を逆さまにかぶり、蝋燭を立てる。
さぞや熱かろうと思うのだが…」

真面目な顔である。津川君、事ここに至って、ようやく気付いた。
先生の目の下に隈がある。地黒である為、判りにくいが疲労困憊が
色濃く宿っている。

「先生…何やらお疲れの御様子ですが」

「うん。今回ばかりは参ったねぇ…何しろ眠れないのさ」

「一体どうなされたので」
津川君、なぁんとなく嫌な予感に包まれながらも仕方なく訊いた。

「津川君、裏山に古い神社があるのを知ってるか」

じっくりと考えるまでも無い。津川君は時間を潰すために
この辺りを歩きまわっている。
「有りますね。何か由緒正しい神社のようですが」

「さよう。嘘か真か知らないが、平将門の首が一旦
休憩したとか言う」

そりゃ嘘だろ、と胸の中で突っ込む津川君だが、無論億尾にも
出さない。黙って頷き、先を促す。

「その由来からか、未だに来るのさ。丑の刻になるとね」

「え。丑の刻参りですか…」

三へ