その温もりが絹田の口を開かせた。
「なぁ、熊さん。聞いてくれるか」
「俺でよければ何なりと。丁度、手も空いたところですから」
絹田は懐から大型の手帳を取り出した。
広げると、それはスケッチブックであった。
「ま、素人の絵だけどさ、隠居してからはこればっかりでね」
腕の良い表具師であった絹田が描いた絵である。
下手ではあるまいと軽く考えていた熊は、最初の一枚目から瞠目した。
この辺りの風景を描いたものが多いが、全て素人の域を超えている。
緻密な表現の底に見え隠れするものは、この街に対する絹田の愛だ。
見ているだけで、熊はその日の疲れを忘れてしまった。
理恵も何やらぼんやりと見ている。
「絹さん、これ凄いですね。参ったなぁ」
「いや、まだまだひよっ子だけどな」
頁を捲る熊の手が止まった。
「あれ。これはまだ描きかけですか」
覗き込んだ理恵は何かに思い当たったようだ。
「この人、見たことある」
絹田の顔色が変わった。
酒で赤くなった顔が、より一層赤くなる。
「有名な人だからな、知ってて当然」
ぶっきら棒な口調は、恥かしさを隠しているようだ。
そう言われた熊も、もう一度よく見直した。
「そう言えば、ええと確か女優の」
「丘美登里」
いつの間にやら仲間に加わっていたねこや堂が
回答を出した。
「なぁ、熊さん。聞いてくれるか」
「俺でよければ何なりと。丁度、手も空いたところですから」
絹田は懐から大型の手帳を取り出した。
広げると、それはスケッチブックであった。
「ま、素人の絵だけどさ、隠居してからはこればっかりでね」
腕の良い表具師であった絹田が描いた絵である。
下手ではあるまいと軽く考えていた熊は、最初の一枚目から瞠目した。
この辺りの風景を描いたものが多いが、全て素人の域を超えている。
緻密な表現の底に見え隠れするものは、この街に対する絹田の愛だ。
見ているだけで、熊はその日の疲れを忘れてしまった。
理恵も何やらぼんやりと見ている。
「絹さん、これ凄いですね。参ったなぁ」
「いや、まだまだひよっ子だけどな」
頁を捲る熊の手が止まった。
「あれ。これはまだ描きかけですか」
覗き込んだ理恵は何かに思い当たったようだ。
「この人、見たことある」
絹田の顔色が変わった。
酒で赤くなった顔が、より一層赤くなる。
「有名な人だからな、知ってて当然」
ぶっきら棒な口調は、恥かしさを隠しているようだ。
そう言われた熊も、もう一度よく見直した。
「そう言えば、ええと確か女優の」
「丘美登里」
いつの間にやら仲間に加わっていたねこや堂が
回答を出した。