すると奥さんの幽霊が恥かしそうにこう言いました。

「だって、お葬式の時にあたしの髪の毛を剃るもんだから…
丸坊主じゃ恥かしくて出られないし。三年かかって、ようやく
ここまで伸びたんです…」

昔は女の人が死んだら髪を剃って埋葬したんです。
尼にしたわけですな。
しかし、可愛らしい奥さんではございます。


さて、ここにもう一組、良く似た夫婦がおります。
旦那の名を仁助、奥さんの名をおりくと言います。
ここも残念なことに奥さんの体が悪い。
同じように亡くなってしまいます。
約束をしたのも同じ。
二人目の奥さんをもらったのも同じです。
ところが少しだけ違うことがある。

二人目の奥さんとの間に、大変に可愛らしい
男の子が産まれたのでございます。

そして何より違ったのは、三年目の法要の晩になっても出てこないんですな。
実は仁助の方は密かに期待して待っておりまして。
きっとあれだ、落語の三年目みたく、今夜出て来てくれるに
違いないと。髪の毛が伸びるまで待っているに違いないと。
でたら兎に角謝ろう、とり殺されるのは勘弁してもらおう。
いえ、命が惜しいわけではありません。
何より、今の家族を守らなくては、そう思っております。

ところが出て来ない。
なんだ、やっぱり幽霊なんてぇものは居ないのか。
残念だが仕方ない、仁助は諦めて寝ちまいました。

終へ