志郎自身は、線の細いなよなよした声である。
ところが、今聞こえている声は違う。
同じ声質だが、張りがある。
けれど何を話しているか、まるで判らない。

日本語のようなのだが、抑揚といい、言葉といい、
現代のものとは異なる。
麻理は何となく神社の祝詞を思い浮かべた。

「志郎くん…起きてる?」

祝詞がいきなり止んだ。
ごそごそとベッドから起き上がる気配が
したかと思うと、ぼさぼさの髪をかきあげ、右手に毛布を
引き摺りながら志郎が現れた。

「あ、あんたはライナスか」

志郎は今までに見せたことのない鋭い視線を投げかけながら、
先ほど聞こえていた声で言った。
「そなた何者じゃ。志郎に何か用か」

寝ぼけているのかもしれないが、それなら尚の事、刺激が必要だ。
麻理は志郎の頬に掌底を叩き込もうとした。

驚いたことに、志郎がその攻撃を受け流した。
ごく自然に、するりと避けたのだ。

(なんだこいつ。すげぇ体捌きじゃん)