ー涙ー

「何だ今のは!」

その声にかぶさる
ように上から悲鳴が
聞こえた。

「どうした!」

「来てください!
わけがわからない!」

刑事の後について
戻った部屋には、
もう私の宝物は
居なかった。

「突然消えたんです!」

「馬鹿なことを言うな!
目を離した隙に逃げた
んじゃないのか?
おい、あんた、どこへ
行ったんだ?ここに
いた子は?」

私はニッコリと
微笑んで答えた。


「天国へ。
そして私は
地獄へ落ちます。
死刑にしてください。
刑事さん、
行きましょう。
もうここには
居られません。」

彰が寝ていた布団は
人の形にくぼんで
いた。

まだ、温もりも
残っていた。

最後にもう一度だけ
布団に触れ、
温もりをもらった。
これで充分だ。



私は人の形を
した鬼だ。

人を喰らって己の
幸ばかり
望んでしまった
鬼だ。




だが、
鬼でも泣く事はある。