村長もまた、笑顔でテリシアを見る。記録用紙を見ることすらしない。
「うむ。皆の衆。安心するがよい、これで村の食事は安泰じゃ」

食の魔法は有用ではあるが、大変に地味な魔法である。
テリシア以外には学ぼうとする者は居なかった。
テリシアにとって、それはむしろ自慢である。
胸を張るテリシアに村長が顔を近づけてソッと言った。
「気をつけるんじゃよ。テリシア。怪我をせぬように、怪我をさせぬようにな。
決して線を足すことのないように」

何のことだろう、とテリシアは村長を見返したが、既に村長は
元居た場所に戻っていた。

「さて、次は記憶の魔法じゃ。村の歴史を学び、
過去を未来に継ぐ大変に難しい魔法である。
これはわしの方から指名したい。ディ、どうじゃ、やってくれるかの」

ディと呼ばれた少女は右手を胸に当て、頭を下げた。
「わたくしでよろしければ、何よりの光栄でございます」
彼女の両親が涙ながらに見つめる。
記憶の魔法使いに選ばれるということは、村一番の栄誉なのだ。

「そうすると、残った者二名はいずれも闘いの魔法を
学ぶと決めたのかの」
村長の問いに、残った一人は顔を上げ、もう一人は深くうなづいた。


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